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No.254 地下水危機の直面する中国

7月初旬に北京で「国際地下水フォーラム2010」が開催され、中国における水事
情が討議されました(1)。中国は世界人口の20%を抱えますが、地下淡水の保有
量は世界の5-7%にしかすぎません。飲料用水と農業用水の多くを地下水に依存
している上に、経済発展に伴って地下水の枯渇や汚染が進行し、緊急対応が必要
だということがそのフォーラムで確認され、地下水位をモニターする全国ネット
ワークの構築とともに、政府によるデータの共有、水の無駄遣いの削減、農業生
産の効率改善の支援などを行うことが示唆されました。
水飢饉は何も中国特有の話ではありませんが、中国での問題は世界の他の地域と
は桁違いの規模であるとフォーラムに参加したアメリカの科学者はコメントして
います。
中国国内での水事情には大きな地域差があります。先ず北部と北西部について
は、農業用灌漑用水の40%と、飲料水の70%を地下水でまかなっていますが、乾
燥した北部平原では1974年から2000年の間に地下水位が毎年1メートル低下しま
した。地下水を得るために数百メートルの深さに到達する必要が生じているのです。
都市における水需要も大きな課題です。すでに中国では660の都市で水飢饉に
なっていますが、経済発展とともに需要は激増し、2030年には国の利用可能な水
の90%を都市域が必要とするようになると水資源省は予測しています。これらに
追い討ちをかけるのが汚染です。特に経済発展が目覚しい南部地域では、重金属
その他による汚染が進行しています。フォーラムでは地下水の90%はすでに汚染
されていて、60%は深刻なレベルであると中国における調査結果が紹介されました。
中国の水管理にも大きな課題が指摘されています。それは地下水と表層水(河川
や湖沼の水)が縦割り行政で別々の役所で管理されていることです。水は地下に
もぐったり河川として地表に現れたりするので、資源量としてダブルカウントさ
れている可能性もあります。ネイチャーの報告書では全体像を把握し、気候変動
や人的活動の影響も加味して全体像を見極めるネットワークの構築が必要として
います。
今回のフォーラムを契機に、中国の水事情の実態が数年のうちには明らかになる と思われます。ネイチャーの記事を読んでいて、参加者のコメントとして出てく るのがアメリカの科学者によるものばかりだったことに引っかかりました。水資 源に恵まれた日本は、隣国として、国際協調あるいは技術の視点から、中国の水 飢饉の緩和に役立てる場にあるのではないかと思ったのですが(2)。嗚呼!
(1)“China faces up to groundwater crisis”, Nature, 466/15, p.308, 2010. ( http://www.nature.com/news/2010/100713/full/466308a.html ) (2)諮問委員、招待講演者リスト参照: http://hydro.pku.edu.cn/BIGF2010/index.htm